かの天才芸術家、北大路魯山人は初めてトラフグを食べた時こう語りました。
「なんの味もないようであったが、やはり、ふしぎな魅力をもっていた」
古くから多くの美食家に愛されてきたトラフグですが、そのおもしろさというか味は単純なものではないのです。
フグ料理の醍醐味といえばトラフグの薄切りされたお刺身を贅沢にがっと取って食べる『てっさ』が有名ですが、
トラフグのお刺身にわかりやすい濃厚な独特の味がするかと言われればそうではありません。
タンパクで弾力があり、どちらかと言えば食感を味わう方が強いでしょう。
しかしどうでしょう?食べているとタンパクな中にも深い甘みがあり、ヒラメのお刺身とは違った繊細な味が押し寄せてきます。
かの有名な俳人の小林一茶もトラフグを食べた後一句作るほどで
『50にてふぐの味を知り、ふぐのを食べたことが無い奴には富士の美しい山を見せるんじゃない!』
というなんとも理不尽を感じつつも強いフグ愛を感じさせていたほど。
何がどう美味しいのか!と説明されても美味く答えられない。でも初めて食べたあのフグの食感と味は忘れられない。
フグにはまだまざ見えざる魅力がありそうです。