「養殖フグには毒がない」この新聞記事を目にした時、私の心に衝撃が走った!!
すかさず長崎大学野口玉雄先生に連絡し、詳しく話をお聞きしたいと申し入れた。野口先生は、「NHKブックスで『フグはなぜ毒をもつのか」 という本を出しているから、その本を読んでから来てください」とのことであった。
早速本を取りよせ、先生に会い話を聞いた。結論として養殖フグは無毒の餌で飼育されているので毒を蓄積しないことがわかった。
これがわたしのフグ肝可食活動へのきっかけで、私の使命感を感じた!
我が社は熊本県天草市倉岳町棚底湾にて現在トラフグのみの養殖をしている。トラフグの種苗生産から陸上養殖、海面養殖、そして自社にて1次加工販売(身欠き)、2次加工販売(刺身)、活魚販売、料理店等、6次産業化を展開している。昭和51年殖業を開始、タイ、ハマチを育て、トラフグは昭和62年に1万尾から開始した。遊びで始めたトラフグは高度経済成長期により高値で売れ続け、消費量も多かった。
そういう環境のなかで、「熊本ではフグは売れんもんな〜」という生産者の言葉に引っかかり、熊本でのフグ消費拡大に挑戦してみようと考え、平成8年にフグ料理専門店を水前寺に出店した。出店前には大分市のフグ料理専門店に視察研修に行った。そこでは煮た肝が沢山使われていて恐る恐る食べた記憶がある。しかし平成10年、野口玉雄先生の話を聞いてから安心して食べられるようになった。
生方にこういった。「この養殖フグの肝が堂々と食べられるよ
なれば、天然トラフグと養殖フグの価格は逆転する」と…
その根拠は一言でいえば養殖フグの価値が上がることだ。トラフグの肝は魚本重の15%〜20%もある。そしてまたその捨てる肝が美味しく食べられる。
マイナス面が逆にプラスになり、本当に、捨てるのとお金になるのとでは大違いだ。そしてまたこれがフグの肝は美味しい。どんなマグロの大トロより油がのっていて刺身もうまいし、強めのわさびで食べる握り寿司は最高に味い!!この美味しいフグ肝を世界の人々に味わいさせたい!
このことを実現できるようになれば、トラフグは無限大に消費拡大につながることは間違いないと確信している。誰もがおわかりいただけるだろうと思う。
フグの消費量は年々減少している。何故か? 大きな原因として
接待交際費の税法の改正が影響していると思う。ふぐ料理は高いイメージがあるので、企業の接待は、ある意味中身ではなく金額だと考えられる。接待される側とする側、両方とも金額が多い方が満足感を充たすので、ふぐ料理が選ばれてきたと考える。自分のお金で飲食する場合、内容と金額が釣り合っているかよく吟味して選ぶのは当たり前のことだ。それと日本国の老人化による胃袋の縮小と若い世代の食生活の変化だと思う。
日本の人口減少は今後益々加速する。このままでは年々消費量は減り、生産者も衰退するのは時間の問題と考えられる。コロナの影響で今後とこまで落ち込むか計り知れない感じがする。フグの概念を変える新しい品種ともいえる無毒トラフグが誕生している。養殖フグでの中毒は過去に起きた実例はない。養殖フグにおいては今後も有り得ないことである。その根拠として、マウスや精密機器による検査結果はもとより、大阪の飲食店での数年間延べ
人数10万人以上の人に提供していた事実では、中毒は全く起きていない。そして大分県は30年前から養殖フグの肝が提供されてきているが、未だに養殖フグでの中毒事故は全く発生していない。
養殖フグが毒をもたないことはお分かりいただけたと思う。
一方、中国でフグは食用禁止だった。中国は自国では食用禁止されている養殖フグを大量生産し、日本に輸出販売している。そういうことからトラフグの価格は暴落し、日本のトラフグ生産者は激減に至った。日本からの種苗生産や養殖技術が導入されて、広大な養殖池を利用して安価な人件費での生産である。そしてまた中国での生産地は日本の東北地方ぐらいに位置し、越冬するのはフグにとっては無理であり、いくら価格が安くても日本に販売するしかなかった。結果、日本のフグ生産者は激減し、残念ながら中国に負けたことを認めざるを得ない状況になっている。日本のトラフグ生産者は、国内の産地間競争ではなく、中国との国際競争だ。
近年、中国では養殖フグは食べられるように規制が改正された。
しかしながら、日本からのフグは輸入禁止されている。日本と中国の力関係が逆転しているのは事実だがそれが原因なのか?そして今後の中国は日本より早くフグ肝が堂々と食べられるようになるかもしれない。生産者としては何もかも中国に負けるのは非常に残念だ。
フグ肝の件では中国に負けてはいけない!!
日本のフグ食文化は中国に負けてはいけない!!
全世界に日本のフグ食文化を輸出できる環境をつくろう!!
養殖トラフグの肝が食べられるようになったら、日本のトラフグ業界は大きく変化し、進化していくであろうと予測する。現在、一部の県にて裏メニューで提供しているフグ料理店は繋盛している。しかしながら、肝料理の提供方法は、そのまま煮て食べる食べ方しかやっていない。私からいわせると、あまり感動できる味ではない。
重複するが、私は生食の刺身ではゴマ油に塩を混ぜたタレで食べる。また、ワサビを包んでしょう油味、そして寿司に乗せて軍艦巻きが非常に美味しい。マグロの大トロの数倍の脂があり、ワ
サビをたっぷり乗せての味は最高だ。
ポイントは薄く切った後にさっと冷水で水洗し、血と油を取り除くことだ。この美味しい食べ方を養殖業者や下関のフグ取り扱い業者が知らないのではないかと感じている。ここに肝食に前向きにならない理由がわかった気がする。このフグ肝が食材として認められるなら、「肝料理はもっと進化するだろう。 5年後10年後を想像した時に、世界から注目される食材になる。そして全世界の一流のシェフが色々なアイデアを出して進化していく料理が創造されるだろう。現在、トラフグは冬の食材のイメージだが、寿司の食材にした場合には1年中売れる食材になる。養殖業界、そして取り扱い業者は大きく好転するだろう。これだけの食材をこのままうずもらせているのは非常に残念でならない。一日も早く食べられる食材になることを祈り、活動を続けていく。